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住宅性能評価
2026/10/26
気密性能とは?C値の目安や高気密住宅の注意点を解説
住宅の気密性能は、建物にどれくらい隙間が少ないかを表す性能です。気密性を高めると、冷暖房した空気を保ちやすくなり、計画換気もしやすくなるため、住宅の省エネ性や快適性に関わります。気密性能を確認するときによく使われるのが、床面積1㎡当たりの隙間の大きさを示す「C値」です。
ただし、現在の省エネ基準にはC値の基準値がなく、数値だけで住宅性能全体を判断するものでもありません。当記事では、気密性能と断熱性能の違い、C値の考え方、気密性を高めるメリットや施工方法、気密測定の方法を解説します。
1. 住宅の気密性能とは
住宅の気密性能とは、建物にどれくらい隙間が少ないかを表す性能です。壁・床・天井の継ぎ目や、窓・玄関ドアの周囲、配管や配線の貫通部などに隙間が少ないほど、室内外の空気が意図せず出入りしにくくなります。気密性能が高い住宅では、冷暖房した空気が外へ逃げにくく、計画換気もしやすくなります。また、住宅の省エネ性や快適性を考える上で重要な性能の1つです。ここでは、混同されやすい断熱性能との違いを解説します。
1-1. 気密性能と断熱性能の違い
気密性能と断熱性能は、どちらも住宅の快適性や省エネ性に関わりますが、役割が異なります。気密性能は住宅の隙間から空気が出入りするのを抑える性能、断熱性能は壁や窓などを通して熱が移動するのを抑える性能です。
| 比較項目 | 気密性能 | 断熱性能 |
|---|---|---|
| 主な役割 | 隙間からの空気の出入りを抑える | 壁や窓などを通る熱の移動を抑える |
| 主に関係する部分 | 壁・床・天井の継ぎ目、窓・ドア周辺、配管の貫通部など | 壁・床・屋根の断熱材、窓、ドアなど |
| 代表的な指標 | C値 | UA値など |
どちらか一方だけを高めるより、気密と断熱を組み合わせて考えることが大切です。両方の性能を高めることで、外気の影響を受けにくく、冷暖房した室内環境を保ちやすくなります。
2. 気密性能を表す「C値(相当隙間面積)」とは
C値(相当隙間面積)は、住宅の床面積1m2当たりにある隙間の大きさを示す指標で、数値が小さいほど気密性能が高くなります。ここでは、省エネ基準との関係と計算方法を解説します。
2-1. 省エネ基準ではC値の基準値がないって本当?
現在の省エネ基準には、C値の基準値は定められていません。国土交通省の設計ガイドでも、気密性能の基準は設けられていないと明記されています。以前は相当隙間面積の定量的な基準がありましたが、施工技術や建材・工法の変化などを踏まえ、2009年の改正で削除されました。
出典:国土交通省「省エネ性能に優れた断熱性の高い住宅の設計ガイド」
ただし、基準値がないことは、気密性能が重要でないという意味ではありません。同ガイドでは、漏気による熱損失を抑えることや計画換気を行うこと、壁体内への湿気の流入を抑えることを気密化の目的として示しています。また、参考にHEAT20が目指すC値0.7±0.2cm²/m²も紹介されています。住宅会社が独自の目標値を設定している場合もあるため、採用する基準と実測値を確認することが大切です。
2-2. C値の計算方法
C値は、気密測定で求めた住宅全体の「総相当隙間面積」を、住宅の延べ床面積で割って算出します。式で表すと「C値=総相当隙間面積(cm²)÷延べ床面積(m²)」です。たとえば、総相当隙間面積が100cm²、延べ床面積が100m²なら、C値は1.0cm²/m²になります。
総相当隙間面積は、図面から単純に足し上げる値ではありません。気密測定では送風機を使って住宅内外に圧力差をつくり、複数の圧力差と通気量の関係から算出します。国土交通省の設計ガイドでは、通常5点の圧力差と通気量を測定し、その結果から総相当隙間面積を求める方法を紹介しています。C値が小さいほど、床面積当たりの隙間が少なく、気密性能が高い住宅と判断できます。
3. 住宅の気密性能を高める4つのメリット
住宅の気密性能を高めると、省エネ性や室温の安定、計画換気、外気中のほこりや花粉の侵入抑制などにつながります。ここでは、主な4つのメリットを解説します。
3-1. 冷暖房の効率を高めてエネルギー消費を抑えやすくなる
気密性能を高めると、住宅の隙間から出入りする空気が減り、冷暖房した室内の熱を保ちやすくなります。国土交通省の設計ガイドでも、気密化の目的の1つとして「漏気による熱損失を抑えること」が示されています。断熱性能と組み合わせることで、暖房時の暖かさや冷房時の涼しさを維持しやすくなります。その結果、設定した室温に近づけるために冷暖房設備が使うエネルギーを抑えやすくなります。
特に高断熱住宅では、隙間からの漏気による熱ロスを小さくするため、気密性能もあわせて確保することが重要です。断熱材や高性能な窓の効果を生かしやすくなり、住宅全体の省エネ性を高めることにつながります。室温を保つための余分な冷暖房運転も減らしやすくなります。
3-2. 室内の温度を一定に保ちやすくなる
気密性能を高めると、隙間風による室内への外気の流入を抑えられるため、室温を安定させやすくなります。暖房時は冷たい外気、冷房時は暖かい外気が意図しない隙間から入りにくくなり、室内でつくった暖かさや涼しさを保ちやすくなります。
特に断熱性能の高い住宅では、気密性能を組み合わせることで外気の影響をさらに抑えやすくなります。部屋ごとや床付近と天井付近などで生じる温度差の軽減にもつながり、住宅内の温熱環境を整えやすくなります。冷暖房設備で調整した室温を保ちやすくなるため、季節を問わず快適な室内環境をつくる上でも気密性能は重要な要素です。居室ごとの温度を整えやすくなり、住宅全体で安定した室温を目指しやすくなります。
3-3. 計画換気を効率よく行いやすくなる
計画換気では、給気口から外気を取り入れ、室内を通って排気口から空気を出す流れをつくります。住宅の隙間を少なくすると、この想定した換気経路に沿って空気を動かしやすくなります。国土交通省も、気密化の目的として「換気経路を明確にして、計画換気を行うこと」を挙げています。
24時間換気などの換気設備は、給気口と排気口の位置を踏まえて住宅内の空気を入れ替えるよう設計されます。気密性を確保することで、換気設備が想定する空気の流れをつくりやすくなり、室内の汚れた空気や湿気を排出し、新鮮な外気を取り入れる働きを発揮させやすくなります。
3-4. 外部からほこりや花粉などが入りにくくなる
壁や床、窓まわりなどの隙間を少なくすることで、意図しない場所から入り込む外気を抑えやすくなります。外気とともに侵入するほこりや花粉などの経路も減らせるため、外気を取り入れる場所を給気口などに集約しやすくなる点がメリットです。
さらに、計画換気と組み合わせれば、給気口から取り入れた外気をフィルターを通して室内へ送る仕組みを整えられます。防塵性能や花粉への対応を備えたフィルターを使用することで、室内へ取り込む粒子を減らす効果も期待できます。気密性と換気経路、フィルターを組み合わせることで、外部から入り込むほこりや花粉を管理しやすくなります。
4. 住宅の気密性能を高める方法
住宅の気密性能を高めるには、気密層を連続させ、窓や玄関ドアなどの開口部、配管・配線の貫通部まで丁寧に処理することが重要です。ここでは、主な方法を3つ解説します。
4-1. 気密層を隙間なく施工する
住宅の気密性能を高める基本は、室内と室外の間にある気密層を途切れさせず、隙間なく施工することです。国土交通省の住宅設計資料でも、気密材を隙間なく施工し、気密層を連続させることで、躯体の隙間における空気の移動を防ぐと説明されています。
気密層には、防湿フィルムや構造用面材、ボード状の断熱材などが使われます。材料そのものの性能だけでなく、壁・床・天井の取り合いや継ぎ目で気密層がつながっていることが重要です。施工時は、シートの重ね部分や面材の継ぎ目などを気密テープ等で処理し、住宅全体で連続した気密ラインをつくります。設計段階から気密層の位置を決めておくと、施工時の処理箇所も具体的に把握しやすくなります。
4-2. 窓や玄関ドアなど開口部の気密性能を高める
窓や玄関ドアなどの開口部では、建具そのものの性能に加え、枠と壁の取り合い部分を丁寧に気密処理することが重要です。国土交通省の施工資料では、外窓や玄関ドアの枠まわりについて、防湿・気密層と枠の間に隙間が生じないよう気密テープで処理する方法が示されています。
窓やドアは壁面に開口を設けて取り付けるため、周囲の気密層とのつながりを確保する必要があります。サッシやドア枠の室内側を気密テープなどで処理し、防湿・気密層を連続させることで、枠まわりからの空気の出入りを抑えやすくなります。製品を選ぶ際は気密性の等級や製品仕様も確認し、建具自体の性能と施工精度の両方から開口部全体の気密性を確保することが大切です。
4-3. 配管・配線などの貫通部を適切に処理する
配管・配線などが気密層を貫通する部分は、専用部材や気密テープ、シーリング材などを使って隙間を丁寧に処理します。国土交通省の施工資料でも、配管などが気密層を貫通する部分では、相当隙間面積を小さくするために気密処理が必要とされています。
給排水管、電気配線、換気ダクトなどの周囲は、気密層に穴を開けるため処理の精度が重要です。貫通部の形状に合わせて気密部材を密着させ、気密層との連続性を保ちます。また、設計段階で配管・配線を通す位置を整理し、気密層を貫通する箇所そのものを減らす方法も有効です。国土交通省も、配管・配線などを非断熱部分に配置することで、気密処理が必要な箇所をあらかじめ減らせるとしています。
5. 住宅のC値を確認する気密測定とは
住宅のC値は、専用の測定器を使って建物全体の隙間を実測する気密測定で確認します。ここでは、C値の算出方法と施工途中・完成時で異なる測定目的を解説します。
5-1. 気密測定でC値を算出する方法
気密測定では、専用の測定器を使って住宅の内外に圧力差をつくり、実際の建物からどの程度空気が出入りするかを確認します。一般的には減圧法が用いられ、窓などに送風機を設置して室内の空気を屋外へ排出し、建物内外の圧力差を段階的に変えながら通気量を測定します。測定には、送風機のほか、通気量や圧力差、外気温・室温を確認するセンサーを使用します。
測定で得られた圧力差と通気量の関係から、JIS A 2201に沿って住宅全体の気密性能を評価します。C値は、測定で求めた総相当隙間面積を実質延べ床面積で割って算出するため、図面上の想定ではなく、気密層や窓・ドア、配管の貫通部などを含む実際の施工状態が反映されます。施工後の住宅がどの程度の気密性能を確保できているかを、数値で確認できる点が気密測定の特徴です。
5-2. 施工途中と完成時では測定する目的が異なる
気密測定は施工途中と住宅完成後の両方で行うことがあり、それぞれ確認する目的が異なります。施工途中では気密施工の品質確認、完成時では仕上がった住宅全体の気密性能の確認が中心です。
| 測定時期 | 主な目的 | 測定後の対応 |
|---|---|---|
| 施工途中 | 気密層の施工状態やC値を確認する | 隙間が見つかった箇所を特定し、内装材で覆う前に補修する |
| 完成時 | 窓・ドア・設備工事まで含めた最終的なC値を確認する | 引き渡し時の住宅全体の気密性能を確認する |
施工途中の測定は、気密層が完成して内装材で覆われる前などに実施すると、隙間の位置を確認して補修につなげやすくなります。完成時はすべての工事を終えた状態を測定するため、実際に引き渡される住宅の性能を確認できます。両方を実施する場合は、施工品質を途中で確認しながら、完成後の最終的な性能まで数値で確かめられます。
6. 気密性能を高めるときの注意点
気密性能を高める際は、C値だけでなく断熱性能や換気、実測値、施工後の変化まで含めて確認することが大切です。住宅性能を総合的に判断するため、ここでは4つの注意点を解説します。
6-1. C値だけでなくUA値などの断熱性能も確認する
気密性能を確認するときは、C値だけでなく、住宅全体の断熱性能を示すUA値もあわせて確認します。UA値は「外皮平均熱貫流率」と呼ばれ、壁・床・屋根・窓などから外へどれだけ熱が逃げやすいかを表す数値です。数値が小さいほど熱が逃げにくく、断熱性能が高いことを示します。C値が住宅の隙間の少なさを表すのに対し、UA値は住宅の外側を囲う部分の断熱性能を表す点が違いです。
C値が小さくても壁や窓の断熱性能が低ければ、外皮を通して熱が移動しやすくなります。反対にUA値が小さくても、隙間が多ければ漏気による熱の出入りが増えます。快適性や省エネ性を高めるには、気密と断熱を別々の性能として確認し、両方をバランスよく確保することが大切です。住宅会社の性能表示を見る際は、C値とUA値の両方を確認すると、住宅の温熱性能をより具体的に把握できます。
6-2. 高気密住宅でも計画的な換気が必要になる
高気密住宅でも、室内の空気を適切に入れ替えるための計画換気は必要です。気密性が高い住宅は、給気口や排気口を通る空気の流れをつくりやすいため、換気設備を計画通りに働かせることが重要になります。住宅では、建築基準法のシックハウス対策として、原則として24時間換気システムなどの機械換気設備が求められています。
換気の目的は、室内の汚れた空気や湿気、建材や家具などから発生する化学物質を屋外へ排出し、外気を取り入れることです。高気密化と換気は相反するものではなく、隙間からの無計画な空気の出入りを抑えながら、決められた経路で空気を入れ替えるために組み合わせます。給気口を家具などでふさがず、換気設備を継続して運転することに加え、フィルターや換気口を定期的に清掃し、空気が流れる状態を保つことも大切です。換気設備の種類や給排気口の位置もあわせて確認しましょう。
6-3. C値は設計値ではなく実際に測定して確認する
C値は設計図から求める数値ではなく、完成した住宅や施工途中の建物を実際に気密測定して確認します。送風機で住宅内外に圧力差をつくり、そのときの通気量を測定することで、施工後の隙間の状態を数値として把握します。そのため、同じ設計や仕様を採用した住宅でも、施工精度によって測定結果が変わる可能性があります。
住宅会社が「高気密仕様」などを掲げている場合は、目標とするC値だけでなく、実際の住宅で気密測定を行うか、いつ測定するか、測定結果を施主へ提示するかまで確認すると安心です。設計段階の目標値は施工方針を決める目安になりますが、実際に確保された気密性能を確認するには実測が必要です。測定方法はJIS A 2201に規定されているため、測定条件や方法もあわせて確認すると、提示されたC値の意味を判断しやすくなります。測定結果を住宅ごとに確認することが重要です。
6-4. 施工後の工事や経年変化で気密性能が変わる場合がある
住宅の気密性能は、完成時の状態が将来まで同じまま続くとは限らず、施工後の工事や部材の変化によって変わる場合があります。建築研究所の実験では、エアコン設置のために冷媒管を通す開口を設けたことで隙間が増えた例や、木材の乾燥収縮によって隙間が広がった例が報告されています。
入居後にエアコンや換気設備、配管・配線などを追加する場合は、壁や天井の気密層を貫通する工事が生じることがあります。工事後も気密層の連続性を保てるよう、貫通部を気密テープやシーリング材などで適切に処理することが重要です。
また、木材や建材は温湿度や乾燥の影響を受けるため、住宅の状態も時間とともに変化します。追加工事を依頼するときは、気密層を傷めない施工方法や貫通部の処理方法を施工者に確認すると、気密性能を維持しやすくなります。必要に応じて、工事後の気密状態を確認する方法も検討できます。
まとめ
住宅の気密性能とは、壁や床、窓まわりなどに生じる隙間の少なさを表す性能です。気密性を高めることで、冷暖房した空気を保ちやすくなり、室温の安定や計画換気、外部からのほこりや花粉の侵入抑制にもつながります。気密性能はC値で確認でき、数値が小さいほど床面積当たりの隙間が少ない住宅と判断できます。
気密性能を確保するには、気密層を連続させ、窓やドアの周囲、配管・配線の貫通部まで丁寧に施工することが重要です。また、C値は実際の建物を気密測定して確認します。住宅性能を見る際はC値だけでなくUA値などの断熱性能や換気も確認し、追加工事や経年変化によって気密性能が変わる可能性も踏まえておきましょう。


