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住宅性能評価
2026/10/26
マンションの住宅性能評価書とは?表示内容や等級の見方を解説
マンションを購入するとき、耐震性や断熱性、配管の維持管理のしやすさなどは、見た目だけでは判断しにくいポイントです。住宅性能評価書があれば、国が定めた共通基準に沿って評価された住宅性能を確認できます。ただし、評価書には設計段階と施工後のものがあり、項目ごとに等級の意味も異なります。
当記事では、マンションの住宅性能評価書の種類や表示内容、耐震・省エネ・維持管理・遮音性能の見方、購入時のメリットと注意点を、初めて確認する方にも分かりやすく解説します。
1. マンションの住宅性能評価書とは?
マンションの住宅性能評価書とは、国が定めた共通の基準に基づき、住宅の性能を第三者機関が評価し、その結果を示した書類です。新築と中古では評価の時期や内容が異なります。ここでは、3種類の評価書について解説します。
1-1. 設計住宅性能評価書
設計住宅性能評価書は、住宅の設計図書をもとに性能を評価した結果をまとめた書類です。国が定める日本住宅性能表示基準と評価方法基準に従い、登録住宅性能評価機関が図面や仕様書などを審査して交付します。マンションでは、構造の安定や劣化の軽減、維持管理・更新への配慮、省エネルギー性能など、評価対象となる項目について設計段階の性能を確認できます。
設計段階の評価なので、実際の施工状態を検査した結果ではありません。購入時に設計住宅性能評価書がある場合は、どの性能項目でどの等級・評価を取得しているかを確認する資料として使えます。施工段階と完成段階の検査結果まで確認したい場合は、建設住宅性能評価書もあわせて見ることが大切です。
1-2. 建設住宅性能評価書
建設住宅性能評価書は、施工段階と完成段階の検査を経て、実際の住宅について評価した結果をまとめた書類です。登録住宅性能評価機関が工事中の所定の工程や完成時に検査を行い、設計住宅性能評価を受けた内容と施工状況を照合しながら評価します。完成後には確認しにくい構造部分もあるため、工事の途中でも検査が行われます。すべての検査が終わった後に、評価結果をまとめた評価書が交付されます。
設計住宅性能評価書が「設計上の性能」を示すのに対し、建設住宅性能評価書は「施工された住宅の性能」を確認する資料です。マンション購入時に両方が交付されていれば、設計段階の評価だけでなく、施工段階・完成段階の検査まで受けた住宅であることを確認できます。
1-3. 中古マンションで交付される評価書
中古マンションなどの既存住宅では、「建設住宅性能評価書(既存住宅)」が交付される場合があります。これは、登録住宅性能評価機関が現況検査を行い、住宅の現在の状態を評価した結果をまとめた書類です。新築時の評価書とは別に、検査時点で確認できる劣化や不具合などの状況を把握するために活用できます。
既存住宅の評価では、部位ごとの劣化事象などを確認する現況検査が行われ、希望に応じて個別性能の評価を受けることもできます。共同住宅では、対象住戸だけでなく共用部分の確認に管理組合等の同意や資料が必要になる場合があります。中古マンションでは、新築時の評価書と現在の評価書を区別して確認することが大切です。
出典:国土交通省「設計住宅性能評価書を交付した住宅戸数は制度開始後、過去最多!~令和7年度の住宅性能表示制度の実施状況について~」
2. マンションの住宅性能評価書には何が表示される?
新築マンションの住宅性能評価では、10分野33項目のうち4分野10項目が必須で、共同住宅特有の項目も設けられています。ここでは、必須項目とマンションで確認したい項目を解説します。
2-1. 必ず表示される4分野10項目
新築住宅の住宅性能評価では、4分野10項目が必須項目として評価・表示されます。マンションでも、以下の項目は共通して確認できます。
| 分野 | 必須となる性能表示事項 |
|---|---|
| 構造の安定 | 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) |
| その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) | |
| 地盤又は杭の許容支持力等及びその設定方法 | |
| 基礎の構造方法及び形式等 | |
| 劣化の軽減 | 劣化対策等級(構造躯体等) |
| 維持管理・更新への配慮 | 維持管理対策等級(専用配管) |
| 維持管理対策等級(共用配管) | |
| 更新対策(共用排水管) | |
| 温熱環境・エネルギー消費量 | 断熱等性能等級 |
| 一次エネルギー消費量等級 |
10項目を見ることで、地震への強さ、構造躯体の劣化対策、給排水管の維持管理・更新のしやすさ、断熱・省エネ性能などを確認できます。同じ分野に属する項目でも、必須ではなく選択項目となるものがあるため、評価書では分野名だけでなく、実際に表示されている性能表示事項まで確認しましょう。
出典:国土交通省「住宅性能表示制度における性能表示事項(必須/選択項目の範囲)が見直されました。(令和4年10月1日施行)」
2-2. マンションだけに表示される10項目
マンションなどの共同住宅等では、戸建住宅には適用されない性能表示事項があります。共同住宅等にのみ適用される10項目は以下の通りです。
| 分野 | 共同住宅等に適用される性能表示事項 |
|---|---|
| 火災時の安全 | 感知警報装置設置等級(他住戸等火災時) |
| 避難安全対策(他住戸等火災時・共用廊下) | |
| 耐火等級(界壁及び界床) | |
| 維持管理・更新への配慮 | 維持管理対策等級(共用配管) |
| 更新対策(共用排水管) | |
| 更新対策(住戸専用部) | |
| 音環境 | 重量床衝撃音対策 |
| 軽量床衝撃音対策 | |
| 透過損失等級(界壁) | |
| 高齢者等への配慮 | 高齢者等配慮対策等級(共用部分) |
マンションでは、上下階や隣戸との関係、共用配管、共用廊下など、共同住宅ならではの性能を確認できるのが特徴です。ただし、10項目すべてが必ず評価書に表示されるわけではありません。維持管理対策等級(共用配管)や更新対策(共用排水管)は必須項目ですが、音環境などには選択項目も含まれるため、実際に評価を受けた項目を確認してください。
出典:国土交通省「住宅性能表示制度における性能表示事項(必須/選択項目の範囲)が見直されました。(令和4年10月1日施行)」
3. マンション購入時に確認したい等級の見方は?
住宅性能評価書の等級は、数字の大小だけでなく、何の性能をどの基準で評価しているかを見ることが大切です。ここでは、マンション購入時に確認したい4つの項目を解説します。
3-1. 耐震等級
耐震性能を見るときは、「耐震等級(構造躯体の倒壊等防止)」と「耐震等級(構造躯体の損傷防止)」を区別して確認します。どちらも等級が高いほど、より大きな地震力に対して構造躯体の強さが確保されていることを示します。
| 項目 | 確認できること |
|---|---|
| 耐震等級(構造躯体の倒壊等防止) | 大きな地震で倒壊・崩壊し、人命が損なわれるような壊れ方を防ぐための性能 |
| 耐震等級(構造躯体の損傷防止) | 地震によって大規模な修復が必要となるような著しい損傷を防ぐための性能 |
| その他(地震に対する構造躯体の倒壊等防止及び損傷防止) | 建築基準法に基づく免震建築物かどうか |
「損傷防止」は数十年に一度程度、「倒壊等防止」は数百年に一度程度起こり得る力を想定しています。また、免震建築物であることが確認された場合は、上記2つの耐震等級を評価しません。マンション購入時は「耐震等級○」という数字だけを見るのではなく、どの項目の評価なのか、免震建築物として表示されているのかまで確認すると、耐震性能を正しく読み取れます。
3-2. 断熱等性能等級・一次エネルギー消費量等級
省エネ性能は、「断熱等性能等級」と「一次エネルギー消費量等級」を分けて確認します。前者は外壁や窓など住宅外皮の性能、後者は暖冷房・換気・給湯・照明などの設備を含めた省エネ性能を評価する項目です。
| 項目 | 等級 | 主に確認できること |
|---|---|---|
| 断熱等性能等級 | 1~7 | 外壁・窓などの断熱性能や日射遮蔽などの対策 |
| 一次エネルギー消費量等級 | 1・4~8 | 暖冷房・換気・給湯・照明などを含めた省エネ対策 |
いずれも基本的に数字が大きいほど高い性能水準を示します。断熱等性能等級では「外皮平均熱貫流率(UA値)」も確認でき、この数値は小さいほど断熱性能が高いことを表します。一方、一次エネルギー消費量等級では、設備を含めた住宅全体のエネルギー消費を評価します。購入時は片方だけで判断せず、建物の熱の逃げにくさと設備の省エネ性能の両面を確認すると、住宅の省エネ性能を把握しやすくなります。
3-3. 維持管理対策等級・更新対策
マンションでは、給排水管などを点検・清掃・補修しやすいかを見る「維持管理対策等級」と、共用排水管を交換しやすいかを見る「更新対策」を確認します。専用配管と共用配管は別々に評価されるため、双方を見ることがポイントです。
| 等級 | 維持管理対策等級の見方 |
|---|---|
| 等級3 | 維持管理を容易にするための対策に特に配慮している |
| 等級2 | 維持管理を行うための基本的な対策を講じている |
| 等級1 | その他 |
「更新対策等級(共用排水管)」も1~3で、等級3は共用部分への配管配置など、更新を容易にするための対策に特に配慮した水準です。評価書には共用排水立管の位置も表示されます。維持管理対策等級は配管そのものの耐用年数ではなく、将来の点検・清掃・補修のしやすさを見る指標です。マンションでは配管の工事が共用部分や他住戸にも関係するため、専用配管・共用配管・共用排水管の更新対策をそれぞれ確認すると、長期的な管理のしやすさを判断する材料になります。
3-4. 重量床衝撃音対策等級
重量床衝撃音対策は、子どもが走り回る音など、床に大きな衝撃が加わったときの音を下階へ伝えにくくする対策を評価します。評価書では、「重量床衝撃音対策等級」または「相当スラブ厚(重量床衝撃音)」のどちらか一方が表示されます。
| 表示方法 | 見方 |
|---|---|
| 重量床衝撃音対策等級 | 5段階で評価し、等級が高いほど遮断性能を確保するための対策水準が高い |
| 相当スラブ厚(重量床衝撃音) | 遮断の程度を均質なコンクリート床の厚さに換算し、5段階で表示する |
重量床衝撃音対策は選択項目のため、住宅性能評価書に表示されているマンションと表示されていないマンションがあります。また、相当スラブ厚と重量床衝撃音対策等級は直接対応するものではありません。さらに、遮音性は反射や共鳴などさまざまな要因の影響を受けるため、評価結果と完成した住宅で実際に聞こえる音が一致するとは限りません。購入時は、床の遮音対策を比較するための1つの判断材料として確認しましょう。
4. 住宅性能評価書付きマンションを購入するメリットは?
住宅性能評価書付きマンションには、耐震性能に応じた地震保険料の割引や、一定の条件を満たす場合に専門的な紛争処理制度を利用できるメリットがあります。ここでは、2つのメリットを解説します。
4-1. 地震保険料の割引を受けられる
住宅性能評価書で一定の耐震性能が確認できるマンションは、地震保険の割引を受けられる場合があります。耐震等級割引は、耐震等級1で10%、等級2で30%、等級3で50%です。住宅性能表示制度の「免震建築物」に該当する場合は、免震建築物割引として50%が適用されます。
ただし、住宅性能評価書が付いているだけで自動的に割引されるわけではありません。契約時には、耐震等級や免震建築物であることを確認できる書類を提出し、所定の条件を満たす必要があります。地震保険には建築年割引や耐震診断割引もありますが、これら4種類の割引は重複して適用されません。購入時に評価書の耐震性能を確認しておくと、地震保険を検討するときに利用できる割引を把握しやすくなります。なお、保険料全体は所在地や建物構造などによっても変わります。
4-2. トラブル時に住宅紛争処理制度を使える
建設住宅性能評価書が交付されたマンションは「評価住宅」に該当し、売買契約などをめぐるトラブルが生じた際に、指定住宅紛争処理機関による住宅紛争処理を利用できます。全国の弁護士会に設けられた住宅紛争審査会で、弁護士や建築士などの専門家が公正・中立な立場から解決を支援します。
利用できる手続きは「あっせん」「調停」「仲裁」の3種類で、評価住宅の申請手数料は1万円です。対象は、住宅の建設工事の請負契約または売買契約に関する紛争で、住宅の不具合だけでなく契約上のトラブルも含まれます。
なお、この制度でいう評価住宅は「建設住宅性能評価書」が交付された住宅を指します。設計住宅性能評価書のみの場合とは区別されるため、マンション購入時には、建設住宅性能評価書まで交付されているかを確認することが重要です。申請時には建設住宅性能評価書の写しなどの提出も必要です。
5. マンションの住宅性能評価書を見るときの注意点は?
マンションの住宅性能評価書は、等級だけで判断せず、評価書の有無や種類、現在の建物状態もあわせて確認することが大切です。ここでは、購入時に押さえたい3つの注意点を解説します。
5-1. 評価書がないマンションもある
住宅性能評価書は、すべてのマンションに交付されるものではありません。住宅性能表示制度は任意の制度であり、評価を受けるかどうかは住宅事業者などの判断によります。国土交通省によると、2025年度の設計住宅性能評価書の交付割合は、新設住宅着工戸数に対して40.7%でした。評価書が見当たらない場合は、販売会社や仲介会社に交付の有無を確認しましょう。
また、設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書は別の書類です。設計評価を受けていても、建設評価まで受けているとは限りません。購入時は「住宅性能評価書あり」という表示だけで判断せず、どちらの評価書が交付されているのか、評価を受けた時期や対象項目まで確認すると、物件の性能を把握しやすくなります。中古マンションでは、新築時の評価書が残っているかも確認するとよいでしょう。
出典:国土交通省「設計住宅性能評価書を交付した住宅戸数は制度開始後、過去最多!~令和7年度の住宅性能表示制度の実施状況について~」
5-2. 等級が高いほどよいとは限らない
住宅性能評価書の等級は、数字が大きいほど性能が高いように設定されていますが、高い等級がすべての購入者にとって最適とは限りません。国土交通省も、ライフスタイルや工事費、地域の気候・風土、デザイン、使い勝手などを考え合わせて、必要な性能を選ぶことが重要としています。
たとえば、高い断熱性能や耐震性能を重視する人がいる一方で、立地や価格、間取りとのバランスを優先する人もいます。また、住宅性能表示制度で評価されるのは住宅性能の特定の項目であり、住み心地全体を表すものではありません。等級の違いが実際の生活にどの程度影響するかも、項目によって異なります。将来の維持費や住み方の変化も考慮し、評価項目の意味まで確認した上で、自分が重視する性能と予算、暮らし方を照らし合わせて判断しましょう。
5-3. 中古マンションでは現在の劣化状況や管理状況も確認する
中古マンションでは、住宅性能評価書に加えて、現在の劣化状況や建物の管理状況も確認することが大切です。新築時に交付された評価書は、その当時の設計や施工段階の性能を示すもので、購入時点の劣化や修繕状況まで示す書類ではありません。既存住宅向けの建設住宅性能評価では、検査時点で確認できる劣化等の状況を評価できます。
一方、マンションの状態は、その後の維持管理や修繕によっても変わります。中古物件では、評価書だけで判断せず、長期修繕計画、修繕履歴、管理規約、管理費・修繕積立金などの資料も確認しましょう。大規模修繕の実施状況や今後の予定も、建物を長く維持する上で重要な情報です。必要に応じて建物状況調査なども活用すると、評価書で示された性能と現在の建物の状態を分けて把握しやすくなります。
まとめ
マンションの住宅性能評価書は、耐震性や断熱性、維持管理のしやすさなどを共通の基準で確認できる資料です。設計住宅性能評価書と建設住宅性能評価書では評価する段階が異なるため、購入時はどの評価書が交付されているかを確認しましょう。
等級を見る際は、数字の高さだけでなく、評価対象や基準の意味まで理解することが大切です。中古マンションでは、評価書に加えて現在の劣化状況や長期修繕計画、修繕履歴、管理状況も確認すると、物件の状態をより多面的に判断できます。


