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住宅性能評価

2026/10/26

サステナブル建築とは?特徴や評価制度を分かりやすく解説

サステナブル建築とは?特徴や評価制度を分かりやすく解説

サステナブル建築とは、建物の設計から解体までを通じて環境負荷を抑え、地域や利用者にも配慮した建築物です。2025年4月以降に着工する建築物には省エネ基準への適合が義務付けられ、建物の環境性能は設計段階で必ず検討する項目になりました。

当記事では、サステナブル建築の定義と注目される背景、3つの特徴、実現するための取り組み、CASBEE・BELS・LEEDという3つの評価制度、導入のメリットと課題を解説します。

1. サステナブル建築とは

サステナブル建築とは、設計・施工・運用の各段階を通じて環境負荷を抑え、地域環境と調和しながら、将来にわたって人間の生活の質を維持・向上させることを目指した建築物です。日本建設業連合会は、地域レベルでの生態系の収容力を維持しうる範囲内で、下記の3点を満たす建築物と定義しています。

  • 建築のライフサイクルを通じての省エネルギー・省資源・リサイクル・有害物質排出抑制
  • 地域の気候、伝統、文化および周辺環境との調和
  • 将来にわたる人間の生活の質の維持あるいは向上

対象は住宅から大規模なオフィスビルまで幅広く、既存建物の改修や運用段階の工夫も含みます。省エネ性能の高さに加え、資材の調達から解体・廃棄までを一続きで捉える点が特徴です。環境性能と、そこで過ごす人の快適性を同時に満たす建物が、サステナブル建築です。

出典:一般社団法人日本建設業連合会「サステナブル建築」

1-1. サステナブル建築が注目されている背景

サステナブル建築が広がっている直接の理由は、建築物分野が日本のエネルギー消費量の約3割を占め、脱炭素に向けた対策が急務とされているためです。国は2050年カーボンニュートラルと、2030年度の温室効果ガス46%排出削減(2013年度比)を掲げています。建物で使うエネルギーを減らさないかぎり、この目標には届きません。

制度面の動きも加速しました。2025年4月以降に着工する住宅などには省エネ基準への適合が義務付けられ、省エネ基準は遅くとも2030年までにZEH/ZEB水準へ引き上げられる予定です。国は、資材の調達から解体までで排出されるCO2を算定・削減するLCA(ライフサイクルアセスメント)の視点も示しました。

出典:国土交通省「建築物省エネ法のページ」

出典:国土交通省「省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。」

2. サステナブル建築の3つの特徴

日本建設業連合会の定義は、ライフサイクルでの環境負荷低減、地域との調和、利用者の生活の質という3本の柱で構成されています。以下では、3つの柱が設計や運用でどのような配慮につながるのかを解説します。

2-1. 建物のライフサイクルを通じて環境負荷を抑える

1つ目の特徴は、資材の調達から建設、運用、改修、解体・廃棄までの全期間で環境負荷を抑える点です。運用時の光熱費や消費エネルギーは目に見えやすい一方、鉄やコンクリートの製造時に排出されるCO2や、解体時の廃棄物も建物が生む負荷です。

国土交通省は、ライフサイクル全体で排出されるCO2をライフサイクルカーボンと呼び、これを算定・削減するLCAの視点を重視する方針を示しました。使う材料の量と種類、建物を使い続けられる年数まで含めて設計を検討しましょう。

出典:国土交通省「省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。」

2-2. 地域の気候・文化・環境と調和する

2つ目の特徴は、その土地の気候や周辺環境に合わせて建物をつくる点です。日本の国土は南北に細長く、地域で気温や日射の条件が大きく変わります。国は全国を8つの地域に区分し、地域ごとに外皮性能の基準値を定めました。北海道と沖縄では、同じ断熱等級を満たすために必要な仕様が異なります。

周辺の街並みや伝統的な構法との調和も、定義に含まれる要素です。日照や通風、既存の緑地への影響を検討し、地域で受け継がれた建築手法を生かす設計も、サステナブル建築の考え方に沿います。

出典:国土交通省「断熱性能|ラベル項目の解説」

2-3. 利用者の安全性・健康性・快適性を維持・向上させる

3つ目の特徴は、そこで過ごす人の安全性や健康性、快適性を損なわずに環境性能を高める点です。断熱性能を上げた住宅では、外壁・屋根・床に断熱性の高い素材を使い、熱の出入りが大きい窓に樹脂製サッシやLow-E複層ガラスを採用するため、夏は涼しく冬は暖かく過ごせます。

ただし、環境性能の追求で室内環境が悪化しては本末転倒であり、CASBEEも室内環境を評価分野の1つに置かれています。

出典:国土交通省「省エネ基準引き上げへ。脱炭素化も。」

3. サステナブル建築を実現するための主な取り組み

サステナブル建築は、個別の施策を組み合わせて実現します。設備投資が要るものから設計上の工夫で対応できるものまで幅は広く、優先順位は用途や規模で変わるでしょう。以下で代表的な5つの取り組みを解説します。

3-1. 建物の断熱・省エネルギー性能を高める

最初に検討したいのが、建物の外皮の断熱性能と、設備機器のエネルギー効率を高める取り組みです。住宅の断熱性能は、熱の逃げやすさを示すUA値と、日射熱の入りやすさを示すηAC値で評価します。非住宅では、屋内周囲空間の床面積当たりの年間熱負荷を示すPAL\*(パルスター)を用い、基準値からの削減度合いをBPIで表します。

設備側では、国が定める省エネ基準からどの程度エネルギー消費量を削減できたかをBEIという指標で確認しましょう。高効率の空調や給湯設備、LED照明の採用で数値は改善します。外皮と設備の両面から取り組むと、同じ室内環境をより少ないエネルギーで維持できます。

出典:国土交通省「エネルギー消費性能|ラベル項目の解説」

3-2. 太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用する

省エネの次に来るのが、太陽光発電などによってエネルギーをつくる取り組みです。消費するエネルギーと創り出すエネルギーの収支を実質ゼロに近づけた建物が、住宅ではZEH、ビルではZEBです。環境省はZEBを、年間の一次エネルギー収支ゼロを目指した建物と説明しました。

東京都は2025年4月施行の建築物環境報告書制度で、延べ面積2,000平方メートル未満の新築の規格建築物に、都が定める基準への適合を求めました。対象は、都内の年間供給面積が20,000平方メートル以上の建物供給事業者です。義務の内容は、断熱・省エネ性能の確保と太陽光発電設備等の設置、電気自動車充電設備等の設置です。

出典:環境省「ZEB PORTAL やさしい説明」

出典:東京都環境局「東京都建築物環境報告書制度の概要」

3-3. 環境負荷の少ない建材や再生材を活用する

建材の選択も環境負荷を左右します。建設リサイクル法は、コンクリート、アスファルト・コンクリート、木材を特定建設資材と定め、一定規模以上の工事に分別解体と再資源化を義務付けています。

対象工事では、着手の7日前までに発注者から都道府県知事へ分別解体等の計画を届け出ます。再生骨材やリサイクル建材を設計段階から選んでおくと、解体時の再資源化もしやすくなります。木材利用も有力な選択肢であり、建築物分野は日本の木材需要の約4割を占め、国産材の活用は吸収源対策にもなります。

出典:環境省「建設リサイクル法の概要」

3-4. 建物を長寿命化して資源消費を抑える

建物を長く使うほど、建て替えに伴う資材の消費と廃棄物の発生を減らせます。国は長期優良住宅の普及の促進に関する法律で、長期にわたり良好な状態で使う措置を講じた住宅を認定しています。認定を受けるには、建築および維持保全に関する計画を作成し、着工前に所管行政庁へ申請しましょう。

認定基準には、長期にわたり良好な状態で使うための措置、良好な居住水準を確保する住宅面積、地域の居住環境への配慮、適切な維持保全計画、自然災害による被害の防止・軽減への配慮が含まれます。建てた後の点検・修繕の計画まで求める点が、この制度の特徴です。

出典:国土交通省「長期優良住宅のページ」

3-5. 緑化や雨水利用などで地域環境に配慮する

屋上緑化や敷地内の植栽は、ヒートアイランド現象の緩和と生物多様性への配慮という2つの意味を持ちます。CASBEEは、室外環境(敷地内)を環境品質の評価分野に、敷地外環境を環境負荷低減性の評価分野に置き、ヒートアイランド対策の専用ツールも用意しています。

雨水の利用も、地域環境への配慮の1つです。雨水の利用の推進に関する法律は、貯留した雨水を水洗便所や散水に使うことを雨水の利用と定義し、水資源の有効利用と、下水道や河川への集中的な流出の抑制を目的に掲げました。同法は地方公共団体による助成についても定めており、貯留施設の設置に補助を用意する自治体があります。

出典:e-Gov法令検索「雨水の利用の推進に関する法律(平成二十六年法律第十七号)」

4. サステナブル建築の環境性能を評価する主な制度

建物の環境性能は、第三者の評価制度によって数値やランクで示せます。国内ではCASBEEとBELS、国際的にはLEEDが広く使われ、評価範囲と表示方法が異なります。ここでは、3つの違いについて解説します。

4-1. CASBEE(建築環境総合性能評価システム)

CASBEEは、建築物の環境性能を総合的に評価して格付けする、国内で最も普及している評価システムです。国土交通省の支援により開発され、2003年度に公表されました。研究開発は一般社団法人日本サステナブル建築協会が担い、評価員登録制度や評価認証制度は一般財団法人住宅・建築SDGs推進センターが運営しています。

評価はQ(建築物の環境品質)とLR(建築物の環境負荷低減性)の2分野で行います。Qは室内環境やサービス性能、LRはエネルギーや資源などに分かれ、採点は5段階でレベル3が標準です。評価結果から建築物の環境効率(BEE)を算出し、その値に応じてC(劣っている)からB−、B+、A、S(大変優れている)までの5ランクに格付けされます。用途別のツールが用意され、ライフサイクルCO2も評価します。

出典:一般社団法人日本サステナブル建築協会「評価方法と結果の表示」

4-2. BELS(建築物省エネルギー性能表示制度)

BELSは、建築物の省エネルギー性能について評価機関が公正に評価・表示する、第三者による評価制度です。2013年10月に非住宅建築物向けの評価ガイドラインが定められたのを受けて始まり、2024年4月施行の新しい省エネ性能表示制度では、表示告示が規定する第三者評価に位置付けられました。

省エネ性能表示制度では、新築建築物の販売・賃貸の広告でラベル表示が求められ、従わない事業者には勧告等もあります。ラベルではエネルギー消費性能を星の数で示し、再生可能エネルギー設備のない住宅は削減率30%以上を上限とした5段階、再エネ設備がある住宅と非住宅は削減率50%以上を上限とした7段階で評価します。省エネ基準は削減率0%以上、誘導基準は20%以上で達成する仕組みです。

出典:一般社団法人住宅性能評価・表示協会「建築物省エネルギー性能表示制度とは」

出典:国土交通省「エネルギー消費性能|ラベル項目の解説」

4-3. LEED(Leadership in Energy and Environmental Design)

LEEDは、アメリカのU.S. Green Building Councilが運営する、世界で最も広く使われているグリーンビルディングの評価システムです。エネルギーや水の使用、資材の選択、廃棄物管理、室内環境の品質までを対象とし、新築や大規模改修のBD+C、内装のID+C、既存建物のO+M、街区のNDなど、種類ごとに評価体系が用意されています。

認証を受けるには、すべての前提条件を満たした上で、クレジットの要件を満たしてポイントを獲得しましょう。獲得ポイントに応じてCertified(40〜49点)、Silver(50〜59点)、Gold(60〜79点)、Platinum(80点以上)の4段階に認証されます。海外の投資家やテナントへ環境性能を示す共通言語となり、外資系企業が入居するオフィスビルで取得例があります。

出典:U.S. Green Building Council「LEED rating system」

5. サステナブル建築を導入するメリット

サステナブル建築の導入は、光熱費の抑制から環境目標への貢献、利用者の満足度まで効果が広がります。設計時のコストだけで判断すると評価を誤るため、運用期間全体で捉えましょう。以下で3つのメリットを解説します。

5-1. 建物のエネルギー消費量を抑えられる

断熱性能と設備効率を高めた建物では、同じ室内環境を保つために必要なエネルギーが減り、光熱費の抑制につながります。断熱性能を上げれば冷暖房の稼働を抑えられ、高効率の給湯設備やLED照明でエネルギーの無駄も減らせます。

住宅の省エネ性能ラベルでは、目安光熱費の表示も選べる仕組みです。エネルギー価格が上昇する局面でも、消費量そのものが少なければ影響を受けにくくなります。太陽光発電を組み合わせれば、購入する電力量をさらに減らせます。

5-2. 環境負荷やCO2排出量の削減につながる

CO2は電気やガス、燃料を使うことで排出されるため、エネルギー使用量を抑える取り組みはそのままCO2の削減になります。建築物分野は日本のエネルギー消費量の約3割を占め、1棟ごとの積み上げが2030年度46%削減という国全体の目標に関わります。

再生可能エネルギーの導入で、排出量をさらに抑えられるでしょう。CASBEEのようにライフサイクルCO2を算定する制度を使えば、削減の度合いを参照値との比較で客観的に示せます。環境報告や投資家への説明で使える数値を持てる点もメリットです。

5-3. 利用者にとって快適な建築物を目指せる

断熱性能の高い建物では室内の温度差が小さくなり、夏は涼しく冬は暖かい環境で1年を通して過ごせます。居室と廊下、浴室の温度差が縮まる点は、住宅の居住性を考える上で見逃せません。

オフィスでは、室内環境の質が働く人の満足度に関わります。CASBEEには室内環境の評価分野に加え、執務者の健康性や快適性に着目した評価ツールも用意されました。環境性能と快適性を同じ基準で確認できるため、テナント募集や社内説明でも根拠を示しやすくなります。

6. サステナブル建築を導入するときの課題

サステナブル建築には、費用と人材という2つのハードルがあります。事前に把握しておけば、補助制度の活用や専門家との連携で対応できるでしょう。以下では代表的な課題と対処の方向性を解説します。

6-1. 初期費用が増える場合がある

高性能な断熱材や樹脂サッシ、太陽光発電設備、高効率の空調・給湯機器を採用すると、標準的な仕様に比べて初期費用が増える場合があります。評価制度の認証を取得する場合は、申請と審査の費用も別途かかります。

対処の1つが補助制度の活用です。国土交通省・経済産業省・環境省の合同事業である住宅省エネ2026キャンペーンでは、新築とリフォーム向けに4つの補助事業が用意されました。光熱費の削減額と補助額を運用期間で合わせて試算すると、判断の材料が具体的になります。

出典:国土交通省・経済産業省・環境省「住宅省エネ2026キャンペーン」

6-2. 設計・施工に専門的な知識や技術が求められる

外皮性能の計算や一次エネルギー消費量の算定、評価制度の申請手続きには専門的な知識が必要です。2025年4月以降はすべての新築住宅・非住宅に省エネ基準への適合が義務付けられ、適合性判定の対象件数も大幅に増えました。設計者には、建築主へ省エネ性能を説明する努力義務も課されています。

体制づくりの方法はいくつかあります。CASBEEには講習と試験を経て登録する評価員制度があり、BELSの評価は登録された評価機関が担う仕組みです。社内に担当者を育てるか、外部の評価員や設計事務所と組むかを、案件の規模に応じて決めておくと手戻りを防げます。

まとめ

サステナブル建築とは、設計・施工・運用の各段階を通じて環境負荷を抑え、地域環境と調和しながら、利用者の生活の質を維持・向上できる建築物です。断熱・省エネ性能の向上や再生可能エネルギーの活用、長寿命化などを組み合わせて実現します。

環境性能はCASBEE・BELS・LEEDで示せます。2025年4月に新築の省エネ基準適合が義務化され、基準は2030年までにZEH/ZEB水準へ引き上げられる予定です。用途と規模に照らし、着手する取り組みを検討しましょう。

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